とりあえず、基本レシピとして「抑えておくべきかな」と、デニッシュ!!

パンレシピ
わたしがお勧めしたいデニッシュのトッピングを集めてみました

折り込み生地は小麦粉の練り物をベースに、溶けていないバターの層を構築し、焼くまでの間にそのバターを溶かさないようにしている食べ物です。焼く瞬間にバターが膨らんで溶けて蒸発することで、そこに空洞ができて、なおかつ、バター風味が添加されて、しかも、生地は層の折り重なった状態になって、独特の食感を生み出します。「パイ」「クロワッサン・デニッシュ」何が違うのか。それはイーストで層になっている生地の部分を膨らますか、膨らまさないかが第一に挙げられます。パイなんかは「タルトストーン」で、むしろ膨らむのを抑えたりしますしね。なので、パイは「パリパリサクサク感」が最高な代わりに、重たく、硬く、しかも、口に残りがち(=くちどけが悪い)になります。クロワッサン・デニッシュは軽く、柔らかく、くちどけも良い代わりに、折り込み生地の代名詞の「パリパリサクサク感」が、パイほどではなくなってしまいます。では次に、「デニッシュ」、「クロワッサン」の違いはどうでしょうか。確実な定義はないと思いますが、一般にパン業界で認知されている認識では「卵が入っているか、いないか」だと思います。卵が入ることでより、軽く、柔らかく、くちどけも良くなりますが、「パリパリサクサク感」はより弱くなります。そして、風味としては、卵が入った途端「ケーキ」のようなお菓子の風味に変わります。基本はクロワッサンと全く一緒なので、むしろ「デニッシュ」はお菓子として「どのようなお菓子の具材を組み合わせるか」に尽きるかと思います。

クロワッサンとの製法の違う部分は、卵が入っている分、火の通りがよくなるので、より低温でじっくり焼き上げることです。170℃~180℃で、15分~25分(パンとしては長め)内部のバターをしっかり蒸発させつつも低温で優しく焼き上げます。なお、私のクロワッサンのレシピはクリーミング法という特殊なものですが、デニッシュでは特にそういった手法も使っていませんので、クリーミングとかはなく、ただ捏ねるだけです。ただし、折り込み生地は低温で作業を維持していくので、「イースト起こし」だけは省略できません。他は全くクロワッサンと一緒なので、所々で「クロワッサンの記事を参照」と出てくると思います。むしろ、ここでは、具を飾っていく作業を堪能していただければと思います。私を含め、ごく少数の者しか知らないような「美味しいデニッシュ」を紹介したいと思います。

パン生地:20センチ×50センチ程度のデニッシュシートの量

ぬるま湯 16g

インスタントドライイースト赤 3g

きび糖 0.6g

春よ恋 200g

糖質 20g ※糖質の種類、配合はお任せします。

ローズソルト 2g

卵黄 8g

冷水 50g

生乳=無調整牛乳 40g

ポッカレモン 2滴

グラスフェットバター 12g

折り込み用バター:グラスフェットバター 100g

1,イースト起こし>ミキシング>一次発酵(フロアータイム)>冷却>折り込み作業(一日目)

こちらは「クロワッサン」のレシピ(クリーミングの作業はありませんので、起こしたイーストと一緒にオールインミキシングになります。)を参照してください。

2,副材料の仕込み

ここで、デニッシュを彩る4品をまとめて作りたいと思います。そこでありきたりなわかりやすい名称で4品(アルファベット)に名前をつけ、かつ、それに使用する副材料(○番号)を前日に仕込んでおきます。

A、チェリーデニッシュ、、、、果物とクリームをのせる、典型的なデニッシュの代表格として、こちらを採用しました。使う副材料は「①カスタードクリーム」「②サワーチェリーのコンポート」です。後の写真でわかる通り、色目を気にするならフルーツの部分に「ナパージュ、グラサージュ」でコーティングすると「映え」るでしょう。ここでは、めんどくさいのでコーティング処理はしません。自分が色気を出してコーティングするなら、「ワインで延ばしたラズベリージャムを濾したナパージュでコーティングするかな。お客様に提供するなら。」とか、思ったりします。(笑)

B、クルミのデニッシュ、、、、こちらはドイツ、オーストリア方面で知られる「クルミのフィリング=ヌスフュルンク」をデニッシュシートで風呂敷包にして仕上げたものです。使う副材料は「③クルミのフィリング=ワルヌスフュルンク」です。ケーキクラムという、ケーキスポンジのカスを集めて「つなぎ」に使います。「安っぽいな」って思う方がいるかもしれません。いやいや、めちゃくちゃ旨いです。パン屋はリサイクル商品がとっても美味しいジャンルであります。フランスパンで「ラスク」、クロワッサンで「クロワッサン・ダマンド」とか。むしろ、本家を超える美味しさになります。ドイツ、オーストリア(地理的にはある意味、南ドイツ)には、美味しいリサイクル商品が数多く存在します。プンシュ・トルテ、マンディアン(ドイツ版フレンチトースト)、果ては製パンの工法で「レスト・ブロート」と、いうのもあります。出来上がったパンを「パン粉」にして、「本捏ね」の時に加える手法です。これもまた旨いです。やはり、ドイツ方面の人たちはよく「日本人に近い」といいますが、「もったいない」精神を発揮しながらも、決して「余り物で作りました」的な妥協を許さない「余り物で本家を超える商品」を作る知恵とクリエイティブさを、このフィリングにも感じます。

C、アプリコット・デニッシュ、、、、こちらは「ケーキ・デニッシュ」とでも言いましょうか、クルートの手法を用いたデニッシュです。「カットしたスポンジ>の上にカスタード>その上にアプリコットコンポートのスライス」を2層にして、デニッシュシートで包みます。仕上げに「ビスキュイ=アーモンドクリーム」「アーモンドスライス」を飾ります。デニッシュの外郭を「デニッシュのサクサク、ハラハラ感」にして、内部をケーキ仕立てにするわけです。柔と剛の調和が、とってもキュイジーヌ(高級感)に溢れた作品です。使う副材料は「④ケーキスポンジ」「⑤ビスキュイ」「アーモンドスライス」「①カスタード」「アプリコットのシラップ煮(缶詰)」(※あえて、下仕込みに手間のかからない副材料には番号を振ってません。)です。

D、アーモンド・プレッツェル、、、、シンプルで完璧なデニッシュです。使う材料は「⑥ローストアーモンドスライス」。デニッシュ生地を”素”で焼いて、焼成後にトッピングするだけです。めっちゃうまいスタンダートレシピです。

※全種類で、「粉糖」と「(粉糖から作る)フォンダンもどき」で焼成後にトッピングをします。

①カスタード・クリーム

別記事でカスタードクリームを紹介しましたが、その延長で、私が最もお菓子でクリームとして使う際にお気に入りなのが、この配合です。卵は卵黄のみ、卵:糖質:液体=2:2:10で標準採用、液体は牛乳使用、別記事の「カスタードクリーム」の凝固剤としては、液体(牛乳)の1/10の小麦薄力粉が標準として推奨していますが、ここでは、米粉を使用。米粉は小麦粉より凝固力が高いので小麦粉の使用量の2/3に抑えます。そして、米粉にはグルテンが含まれていませんので、舌触りがしっとり、ねっとりと濃厚に仕上がるくせに、舌にべっとり残る感じがありません。とっても濃厚でくちどけの良いクリームが出来上がります。それが、下の配合です。最小単位なので、必要に応じて倍率で増やしてもいいと思います。作り方は「カスタードクリーム」の記事をご参照ください。

卵黄 30g

糖質 30g

牛乳 150g

米粉 10g

バニラオイル 4滴

バター 7.5g

②サワーチェリーのコンポート

サワーチェリーの缶詰は酸味とても強い代わりに、糖分がとても少ないです。なので、こちらで手を加えてあげます。まずはサワーチェリーの缶詰の実とシロップを分けて、シロップの総量を計っておきます。計ったら、シロップをざっくり8割+2割に取り分けます。シロップの総量の1/5の糖質と、8割のシロップ、サワーチェリーの実を一緒に鍋で常温から煮始めます。煮立ったらすぐ火を止めます。そしたら、2割のとっておいたシロップに「シロップ総量の1/30の片栗粉」をよく混ぜ合わせ、煮立たせた鍋に投入します。部分的に固まらないように素早くかきまぜたら、また火にかけます。再度しっかり煮立たせたら、火を止めて出来上がり。常温で一日かけてじっくり冷まします。冷めたら、タッパーなどで冷蔵保管します。

サワーチェリーの缶詰 1缶

糖質 缶に入っているシロップの1/5の量

片栗粉 缶に入っているシロップ1/30の量

③クルミのフィリング

材料を鍋に上から順番に投入します。バターを溶かしたら、糖質と牛乳をいれて、砂糖も溶かしたら、アーモンドプードルをいれて、少し火を通します。そしたら、ケーキクラム(ケーキスポンジのクズ=後述のケーキスポンジから調達します)をいれて、木べらでよく練ります。均一に混ざった「練り物状」のものが出来上がったらクルミの粗みじん切りを加えてよく混ぜます。クルミも混ざったら、火を止めます。仕上げにオレンジピールを入れて混ぜ、シナモンパウダー、ラム酒(子供向けにアルコールの投入を控えたいなら「ラムエキス」というのもありますので、そちらで代用してください)で味を調えます。冷ましたら、フィリングとして使えます。

グラスフェットバター 15g

糖質 50g

牛乳 120g

アーモンドプードル 10g

ケーキクラム 60g

クルミの粗みじん切り 100g

ラム酒 少々

シナモン 少々

オレンジピール 13g

④ケーキスポンジ

こちらはシフォンケーキのレシピをそのまま代用したものです。作る手順は「シフォンケーキ」をご参照してください。ここでは、洋菓子らしさを出すため、液体は牛乳を使っています。分量は「シフォンケーキ」の1/3量で卵2個をベースに作っています。シフォンケーキとして仕上げるわけではないので、パウンド型で焼いています。今回は180℃で20分焼きました。ちなみに卵は「クルミ入りバナナマフィン」の業務用レシピの記事のところで記載している「Lサイズの歩留まり込=全卵一個=57g」で計算しています。

ジェノワーズ=スポンジ生地作成の写真。卵を2個使用した分量

全卵 2個

糖質 27g

こめ油 22g

牛乳 33g

米粉 50g

バニラオイル 4滴

⑤ビスキュィ

こちらはキッチンボールにホイッパーで混ぜ合わせていきます。バターをホイッパーで混ぜ、ポマード状にします。そこに糖質をいれて、糖質をよく擦り交ぜて糖質とバターが完全に混ざった状態にします。そこに溶いた全卵を25g投入して、均一に混ぜます。最後にアーモンドプードルを入れて混ぜます。

全卵 25g

糖質 25g

グラスフェットバター 25g

アーモンドプードル 25g

⑥ローストアーモンドスライス

こちらは、アーモンドスライスを焼くだけですが、アーモンドスライスは焦げやすいので、150℃のオーブンで、様子を見ながら焼きます。パンをトーストするような短い時間で仕上がります。少し色付き始めたらすぐさま、オーブンから出して出来上がり。目を離すとあっという間に焦げますので、注意です。

3,オーバーナイト冷却>折り込み作業(前半)>冷却>折り込み作業(後半)

こちらも「クロワッサン」のレシピを参照してください。

4,成形>二次発酵(ホイロ)>焼成

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残りの生地の半分を帯状に(左上)とって、プレッツェル成形に。一方、10センチの正方形を半分に長方形にとり、切り目を入れて「コンニャク」成形(右手前)

A,Dのサワーチェリーデニッシュ、アーモンドプレッツェルは、成形の段階では生地しか使いません。上の写真の右手前が「サワーチェリーデニッシュ」の成形。上の写真の左上の「帯紐状」の生地は”ネジネジ”して、プレッツェルの形にします。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: IMG_0216-1024x768.jpg
10センチの正方形シートにクルミのフィリングを詰め、風呂敷包をして包みでピン止めしている様子

上の写真はBのクルミのデニッシュの成形。10センチの正方形にカットしたデニッシュシートにクルミのフィリングを適量のせて風呂敷包み。綴じ目をクルミでピン止めします。

長さ20センチ、幅14センチのデニッシュシートに具を盛り付けているところ
アプリコットのデニッシュを成形している模様

上の2枚の写真はCのアプリコットデニッシュの成形。仕込んだケーキスポンジの約半分(残りの約半分はクルミのフィリングの「ケーキクラム」に使用)を短冊状にカット、スライスします。そして、2つ上の写真のように長方形のデニッシュシートに「スポンジ>カスタード>スライスアプリコット」×2層を載せます。長方形のデニッシュシートの両サイドには切り込みを入れておきます。そして上の写真のように両サイドの生地をたくし上げて、着物の衿のように左右交互に折り合わせていきます。

成形が終わって、二次発酵(ホイロ)を取る直前の様子

上の写真が成形終了時の写真。甘い汁が鉄板に張り付くので、クッキングシートは必須です。

二次発酵が終わって、焼成前のトッピングをした様子

上の写真は二次発酵=ホイロ終了後のトッピング模様。まずは、すべての生地に「塗り卵」を塗っておきます。

Aのサワーチェリーデニッシュには、中央部にカスタードクリーム、そこに3粒の仕込んだサワーチェリーを乗せます。そして、かるく押さえつけます。

Cのアプリコットデニッシュには、上部に「ビスキュィ」をぬり、その上にアーモンドスライスを散らします。

Bのクルミのデニッシュ、Dのアーモンドプレッツェルは、そのままです。

焼成後の様子 残り生地はつまんで、食べてしまいました。冷凍保管するなら、このタイミングがいいと思います。

そして、180℃のオーブンで15分~20分焼きます。上の写真がそれです。左の鉄板の「小物系」は15分、右の鉄板の「大物系」は20分焼きました。

焼成後にトッピングを済ませた写真

上の写真が焼成後のトッピングを済ませたところです。

Aのサワーチェリーデニッシュ、Cのアプリコットデニッシュは、粉糖を振っています。

純粉糖に少量の水を足して、よく練ると、乳白色の「ドロッとした砂糖」ができます。これが「フォンダンもどき(本格的なフォンダンは大変おいしいのですが、大変手間がかかるので今回はパス)」です。Dのアーモンドプレッツェルには、まんべんなくフォンダンをかけて、「ローストアーモンド」をまんべんなく貼り付けます。Bのクルミのデニッシュには、ピン止めをした「中心部の飾りのクルミ」の周りにフォンダンを落として、アクセントを付けます。

以上になります。

アプリコットデニッシュの断面。中がフワフワトロトロ、外サクサクの巻。

※業務用レシピ

ほぼクロワッサンと一緒です。「卵の入ったクロワッサン生地」と思って、いいと思います。クリーミングするほどの練りこみ油脂は無く、対粉6%のバターにとどまっています。ただ、それによって生地の総量は減っている代わりに、クロワッサンと同じように対粉50%の折り込み油脂を使っているので、結局のところ、バター比率はそんなには落ちていません。

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