糖質の運用。製パンにコンデンスミルクは使い勝手がいい。そしてやはり、天然のはちみつが最強だった。(これからの時代のパンには必須な条件だと思います)

材料の運用/製法の考察
左からコンデンスミルク、きび糖、国産はちみつ、トレハロース、オリゴ糖、カラントS(羅漢果エキス+エリスリトール)、純粉糖

糖質は主に3種類に分類されます。純粋な「食品」、「天然甘味料」、「人工甘味料」の3つです。人工甘味料には様々な副作用が報告されてますので、私は使いません。トレハロース、カラントSは天然食材から甘味成分を抽出した「天然甘味料」になります。きび糖、コンデンスミルク、純粉糖、はちみつ、オリゴ糖は純粋な「食品」に分類されます。キシリトールなど、天然甘味料は他にも多くの種類が存在しますが、入手が難しい物も多いのでここでは普通に入手できるトレハロース、カラントSに絞ります。

以前にもお話した通り、パンは糖質過多になりがちです。主成分が糖質のもとになる「炭水化物」で、そこに甘味料としての糖質をさらに加えるからです。糖質は生命の維持活動には欠かせない「ガソリン」のような燃料としての働きがありますが、摂取過多に多くの弊害があるのは周知されていると思います。なので、パン(お菓子)に「低糖質化」は不可欠だと思います。もともとが糖質過多な食品なので、低糖質化をしてやっと「糖質量の適正な食品」になると思います。

次にわたしの考える「低糖質化」をお話ししたいと思います。低糖質化といって”代替え食材だけ”で構成した食品はとても美味しいとは思えません。やはり、偽物は偽物です。本物をベースにして代替品を少量加える「ハイブリット」がベストだとおもいます。そうしないと、「美味しい」「満足感」の要素を体で実感することができないからです。実際にいろいろな種類の糖質をいろいろな配合率で試しました。その結果、甘味料の最低約半分は「蔗糖」である必要を感じました。並行して「パン、お菓子作り」を仕事としてやっていた時に「同じ味覚の分類上の食材を多種類使用して、その味に深みを付ける」という手法を知りました。言い方をかえれば、例えば「甘味にグラデーションをつける」とかです。そうすることで、甘味なら甘味、辛味なら辛味、苦みなら苦みが、豊かに引き立ちます。この手法を利用して、約半分を蔗糖ベースにして残りを1~2割づつほかの種類の甘味料でバランスよく構築していきます。そこにオリゴ糖や、カラントSを上手く配分することで、30%前後の糖質カットを実現できます。糖質も生命活動に必須な要素であるため、完全糖質カットは身体、精神ともに不健全だと思います。なので、30%前後の糖質カットは丁度よい加減だと思います。ざっくり1/3カットとは、いままでの食事に差し替えた場合、同じ量を食べても、3食分なら2食分の量にしか値しないことになります。1食抜くのと同じです。でも、食べ物には他の栄養素の摂取も重要です。1食抜くのは良くないと思います。糖質30%前後OFFとは、「3食しっかり食べて、糖質だけは2食分しか摂取していない」ということになります。すごくヘルシーだと思います。

次に各糖質の特徴を説明していきたいと思います。

①きび糖  主にサトウキビから蔗糖を抽出します。精製しないで抽出したものが「きび糖」になります。精製の最初の過程でとれた白い蔗糖が「上白糖」になります。上白糖を抽出した後の原材料にもまだまだ蔗糖の成分が残っていまして、それを何度も煮詰めて抽出したものが「三温糖(=粗糖)」になります。なので、きび糖も上白糖も三温糖もカロリーから、甘味から、成分から基本すべて一緒です。三温糖は部分的に色がついてカラメル化しているので、キャラメリーゼの風味のコクがプラスされます。きび糖は精製しないで作ったものなので、サトウキビに含まれていたミネラルなどが残留して、それが豊かな風味を加えています。三温糖やきび糖の風味は言い方を変えれば「雑味」にもなりますので、それを排除したものが上白糖と言えると思います。それぞれの良さがあるので、選択肢は一長一短だとおもいます。わたしは、以前の記事にも書きましたが①素材は丸のまま(に近い方)がいい。②同じ種類の味覚にグラデーションを付けるとその風味が引き立つ。という理由から、きび糖をチョイスします。スプーン印の「きび糖」はさらさらしてて、グラニュー糖っぽく使えるのもいい感じです。

②コンデンスミルク  牛乳に上白糖を加えて凝縮したものが「コンデンスミルク」になります。上白糖を加えずに凝縮したものは「エバ・ミルク」になります。コンデンスミルクは加糖練乳ともいいます。加糖練乳は煉乳ともいいまして、加熱して水分を飛ばしながら煉りながら(練りながら)作り上げます。乳製品には種類ごとの規格が存在します。コンデンスミルクは糖質55%以下、固形成分28%以上、固形成分の内の脂肪分8%以上。となっています。脂肪分以外の固形成分とは、無脂固形成分です。牛乳由来の脂肪分とはほぼバターです。牛乳由来の無脂固形成分とはほぼスキムミルク(=脱脂粉乳)です。加熱によって煮詰めて作っているせいか、コンデンスミルクの糖質は実際に含まれている糖質量より甘く感じる気がします。なので、コンデンスミルクを10%加えた場合、ザックリ6%の上白糖、2%のスキムミルク、1%のバターを加えたものとほぼ同じものが出来上がります。これってパンには、とても理想的な配合になります。フランスパン生地に徐々に糖質を加えていくことでソフトなパンになっていくのですが、その添加したい甘味成分をコンデンスミルクで配合していくと、自動的に甘味に比例して脱脂粉乳とバターが理想的な値で添加されていきます。一方、スキムミルクを使うより牛乳、牛乳を使うより生クリームを使う方が味は格段にアップします。なぜかといいますと、無脂固形成分と水分と脂肪分が、もともと一つの材料として、しっかり結合(乳化)されているからだと思います。コンデンスミルクにもこの法則が当てはまります。コンデンスミルクは糖質も乳成分ともよく混ざり合って(マリアージュして)います。独特な甘味(多分加熱によって乳糖⦅ラクトース)もわずかながらに変性を起こして甘味に風味をプラスさせているのかもしれません)に加えて、程よい乳製品を加えるパンを作る場合、わたしはコンデンスミルクを最優先にして配合するようにしています。保存性もよく、無添加で、しかも安価です。そして旨い、パンに合う。優秀です。もしコンデンスミルクだけを配合して「無脂固形成分をさらに添加したいな」と思う場合は牛乳を、「脂肪分(バター)を更に添加したいな」と思う場合はバターか生クリームを、別途添加します。

③純粉糖  粉糖はグラニュー糖を微粉砕した粉末状の物です。グラニュー糖は上白糖より精製度が高いので、純粋ですっきりした甘味が特徴です。そして微粉末であるため、水分とすぐに完全に結合しやすいです。それ故に「フォンダンもどき(=デニッシュなどに乗っている『あの白い硬い甘いやつ』です)」も簡単に作れます。あと、お菓子は糖質を完全に擦り混ぜることが美味しいお菓子を作るための鉄則になりますが、粉糖を使うことでそれを容易にします。更に砂糖が純白なので、見た目に映えて、パン生地、菓子生地本来の色をけがすこともありません。ただし、ただの蔗糖で低糖質の対策を施すことはできません。なので、わたしは飾りの時のみ純粉糖を使用します。

④国産はちみつ  一見、外国産はちみつに比べるとサラッとしていて、「味が薄いんじゃないか」って思っている方もいると思います。でも、お高め上等で実際に買ってみてください。味も濃く、甘味も強いです。さらっとしていても攪拌するとすぐに粘りが強くなって、逆に今度は白く凝固してしまいます。はちみつは果糖、ブドウ糖が甘味の主成分になります。その他ビタミン、ミネラル分も多く含みます。人は一般的に、固形物の糖質より、シロップ状の糖質は「水で希釈されて味が薄いのではないか」と思う方もいると思います。でも、糖質は例外です。糖質は水分中では濃厚に存在しうることが可能な特性を持ちます。固形物の糖質の物理的な「隙間の空間」も考慮すれば、ともすると、シロップ状の物の方が同じ容量に対して固形物より濃厚な場合も多いです。さて、カロリーは100gに対してはちみつが294カロリー、上白糖が384カロリー。カロリーは上白糖の約3/4です。そして甘味感は上白糖を1倍とすると、はちみつは1.3倍になります。これは、上白糖を100g使う場面では、代わりにはちみつを77g使用すれば、同じ甘味感が出ることを意味します。そして更にカロリーは約3/4になりますので、上白糖をはちみつに差し替えるだけでカロリーを約40%カットできます。完璧な、低糖質対応天然甘味料です。ただ問題があります。それは、もしそうした場合、「完全なはちみつ味になってしまう」「お値段が高くつきすぎる」ということです。なので、わたしはベースの「きび糖」に対して、風味アップや甘味感調整用の「間接的甘味料」として使用します。また、安全性も考えて(うま味の上質さも考えて)国産はちみつを使用します。

⑤トレハロース  でんぷんから土壌に含まれる天然の細菌の酵素によって分解、生成される天然甘味料です。腸からの消化吸収には腸内でトレハローゼという酵素の助けを必要とします。分解出来なかったトレハロースは糖として吸収されずに体外へ排出されます。個人差はありますが、一般的に約半量が糖として吸収され、残りの約半量が体外に排出されるようです。このような性質を持つ糖質を「難消化糖質」と言うそうです。比較的、「乳糖(ラクトース)」に似ていると思います。故にカロリー的には上白糖の半分弱に抑えられます。甘味感は上白糖の約40%となっています。穏やかで自然な甘味が魅力ですが、カロリーと甘味感で見ると結局は上白糖とさして変わりません。しかし、トレハロースはそれだけにとどまらない様々な効能があります。⑴保湿性が高い。食品の「みずみずしさ」の維持の向上に効果があります。⑵脂質、糖質の変性を防ぐ。食品が劣化していくのを抑制する働きがあります。などがあります。多く糖質として配合しても、一定の限度迄の効果しか得られませんので、糖質の一部として「少量」配合するのが最適です。乳糖と同じく「難消化糖質」になるので、大量の摂取は「お腹を下す」原因になります。

⑥カラントS エリスリトール(天然食品からの抽出物、糖アルコールに分類されます)に少量の羅漢果エキスを配合した「SARAYA」の固有商品です。スーパーなどで手軽に入手出来ます。エリスリトールは「難消化糖質」で、腸内で90%以上吸収されるものの血液には吸収されず、尿として排出されます。なので、糖質のカロリーはほぼゼロです。エリスリトールの甘味感は、上白糖の60%程度にとどまりますが、羅漢果エキスという非常に希少な甘味料は確か上白糖の約50倍の甘味感を持っているようで、それをごく少量配合することで上白糖と同程度の甘味感を実現しているようです。かなり理想的な代替え糖質だと思います。しかし、ショ糖由来ではないので、その甘味感は上白糖とは異質の甘味かと思います。そして「難消化糖質」故に、多量の摂取は「お腹を下す」原因になります。それとエリスリトールは「冷却をすると再結晶を起こしやすい」と言う性質を持っています。つまり、アイスクリームのように冷やすと糖質が「ジャリッと」固まってしまう事があります。この辺は要注意です。以上の事を踏まえてわたしはベースの「きび糖」に15〜20%の割合で使用する様にしています。

⑦オリゴ糖  様々な食品から抽出できる甘味料です。分類的には単なる「食品」になるようです。オリゴ糖も「難消化糖質」です。腸内では身体に吸収する事が出来ない(つまり、ほぼカロリーゼロな)代わりに、腸内の善玉菌のビフィズス菌の栄養源となります。なので、整腸作用があります。特徴は、⑴他の食材とよく混ざりやすいです。⑵熱に弱く、熱により変性しやすいです。⑶「難消化糖質」なので、多量の摂取は「お腹を下す」原因になります。などがあります。散々説明してきましたが、「身体が吸収出来ない糖質=カロリーゼロ」となり、「身体が吸収出来ない糖質=体外に排出される」となり、「体外に強制排出=お腹を下す」となります。食品を摂取してカロリーを抑制する事と、お腹を下しやすくする事はトレードオフの関係になります。わたしは以上の事から、オリゴ糖に関しましても糖質の全量のうちの15〜20%の範囲で配合する様にしています。

まとめ:わたしは以上の事から糖質を使用する場合は、本来上白糖などで甘みつける総分量を100分率に置き換えて、「きび糖」40~50%、「カラントS」15~20%、「オリゴ糖」15~20%、「はちみつ」5~10%、「トレハロース」5~10%を目安に配合し、糖質として利用しています。クリームパンならパン生地+クリームで構成されていますので、クリームとパン生地に加える甘味料をトータルで考えて、分配したりもします。熱の入りが比較的弱いクリームの方に熱に弱い「オリゴ糖」を多めに、しっかり火は通すけど焼成後冷やす機会がすくないパン生地には「カラントS」を多めに配合したりします。その食品にあまりにも向いていない糖質は省いたりもします。「カラントS」「オリゴ糖」の「難消化糖」は全量の30~40%に収まるようにします。そうすることで、低糖質化を実現します。わたしは「難消化糖」は食物繊維のようなものだと考えます。食物繊維も取りすぎは「お腹を下す」要因になりますし、逆を返せば「お通じが良くなる」とも言えますので、30~40%くらいの内訳が健康にベストだと考えます。それらのようにして糖質の内訳の微調整をしています。

いかがでしたでしょうか?もしみなさまも「このほうが具合よくないですか?」など、ございましたらコメントいただけたらと思います。

では、また。

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