上が実際の写真。完璧な仕上がりです。
クロワッサンも色々な店舗で何十種類ものレシピを体験してきましたが、ほとんどが弾力の強い(サンド用に適した)クロワッサン系です。この系統は路面店さんでいくらでも美味しいものがあるので、手間のかかる分、お店で買うほうがコスパがいいかもです。しかし、今回紹介するクロワッサンは、パンらしいふんわり感がしっかりありつつ、弾力が少なく口溶けの良いスポンジケーキのような食感をもつ非常に珍しいクロワッサンです。大好物の一つです。このタイプはめったに売ってません。「パン作ってる人でもこのタイプを知ってる人は少ないんじゃないでしょうか?」って、私自身感じます。理由はクリーミング法を使い、更に油脂を折り込みと練り込み両方で断層を構成しているからだと思います。是非、お試しいただきたい一品です。
レシピ:8個分
インスタントドライイースト赤 2.8g
きび糖 1g
ぬるま湯(38度~40度)15g
グラスフェットバター 30g
ショートニング(パーム椰子由来)20g
ローズソルト 2.4g
トレハロース 4g
オリゴ糖 4g
カラントS(顆粒) 4g
はちみつ 4g
きび糖 3g
キタノカオリ 160g
ドルチェ(北海道産薄力粉) 40g
冷水 85g
(折り込み用に使う)グラスフェットバター 100g
1、イースト起こし
小さいボールなどを使い、イーストとぬるま湯をいれ、次にきび糖1gをいれ、よくかき混ぜます。その小さいボール自体も、ぬるま湯と同じ温度で湯煎にかけるようにします。よく混ざったら、表面が乾かないようにラップなどで軽く被いをして、8分待ちます。8分経過したら、またもう一回よく混ぜ合わせて、7分待ちます。これでイーストが完全に発酵を始めている状態になると思います。
2、クリーミング
ショートニングを先に柔らかくして、つぎにバターを柔らかくして、ホイッパーがかけられる状態にします。そこに塩、糖類をすべて入れ、よく擦り混ぜます。しっかり混ざってホイップ状になるまで、しっかりホイッパーで混ぜます。
3、ミキシング>一次発酵>冷凍>冷蔵>折り込み(成形、前半)
冷水>クリーミングしたもの>粉類>(最後にそっと粉の上に)イースト液(多分ジェル状になってると思います)の順番で投入して低速3分、高速7分回します。フタは開けた状態で、ゴムベラで掻き落としなどのミキシングのフォローをしてあげます。終了したら、そのまま30分一次発酵を取ります(ミキサーのフタを閉めて生地が乾くのを防ぎます)。30分たったら平らな座布団状に形を整えて、ビニール袋で包み、冷凍庫で45分~60分寝かします。冷凍庫で生地を冷やし終わったら、冷蔵庫で1時間以上は寝かせるようにします。冷蔵庫で寝かし終わったところで、折り込み用のバターシートを作ります。冷蔵温度で比較的固めな状態のバター25g×4片分を破けないようなビニール袋(衝撃でビニール片が入らないように)で挟み込んで、ビニール越しに4片それぞれを麺棒でたたいて平らにします。次に2片を重ねたのを2つ作り、また平らになるようにたたき潰します。最後に100gの1塊にしてたたきつつ、(端をたたむように内側に入れながら)四角いシート状にして改めてビニールにくるみなおして、冷凍庫か冷蔵庫で5~10分ほど表面が解けないように少し冷やします。下準備が出来たら折り込み開始です。生地をバターより一回り大きい四角になるように整えたら◇の様に置き、その生地の上に̻シートバターを▢の様に置き̻̻、☒の様に四隅をたくし上げて、風呂敷の様に生地でバターを包みます。生地の綴じ目は強めにしっかり閉じ合わせます。麺棒を使い、たたいたり、押し付けたり、転がして伸ばしたりしながら長い長方形に伸ばしましょう。生地が1㎝弱の厚さになるまで伸ばすことがポイントです。それを3つに敷き布団のようにたたみます。キレイにたたんだ生地がずれないように軽く麺棒で四辺を抑えつけてから、90度角度を変えて、またそれを1/3の薄さになるように長方形に伸ばしてもう一回三つ折りをします。また四辺を抑えつけたら、麺棒で平らにならし、ビニール袋で被って、冷凍庫で1時間冷却します。その後冷蔵庫に移して次の日まで寝かします。理由は、生地の張りがピークに達しているので今日の成形はここまでとし、じっくりベンチレーターをとってしっかり生地を弛緩させるためです。もう一つのポイントは折り込み作業時、「座布団状の生地にその都度バターが端までいきわたっているか」が重要です。このくだり、デニッシュ食パンも、後に記事になるデニッシュもしかり、折り込み生地は全て一緒です!で、動画作ってみました!→https://youtu.be/nnFarlNVO-Y
4、折り込み(成形、後半)>二次発酵>焼成
翌日、もう一度3つ折り作業をします。計3つ折り×3回になります。この後は最終伸ばしとカットになりますので、サイズを整えておきます。最終の厚さ3ミリで、底辺10㎝×高さ20㎝の二等辺三角形が基準になります。最終伸ばしも自然と長方形になるのですが、最終伸ばしで長く伸ばすほうじゃない方の「辺」を20㎝になるように先に垂直方向に伸ばしておきましょう(これをパン屋さんでは「幅だし」とか言ってます)。そうすると生地を無駄なくカットできます。3つ折りの後、最終伸ばし1㎝弱(6~8㎜位?)で生地の張りが限界に来るので、無理せず、一回45分ほど冷凍庫>その後1時間以上冷蔵庫に移して生地を弛緩させましょう。 ※折り込み作業二日目(前半)の動画はこちらです。→https://youtu.be/2Ktv13UfLv4休ませたら、伸ばしていきます。幅20㎝+ちょっとの帯状に3㎜の厚さまで伸ばします。均一に3㎜の厚さまで伸ばすことが「きれいな生地の層」が出る秘訣なので、3㎜厚の細長いアクリル板などの硬質素材を2本用意して、生地の幅の両端に線路のレールの様に置きます。そして麺棒の両端をその硬質素材に乗せてしっかり伸ばします。生地は伸ばしても弾力で少し厚みが戻りますので、生地を裏に返してもう一回同じ作業をしてしっかりと3㎜厚に統一してあげます。パスタマシンを代用してもいいかと思います。そして、生地を横長に見たてて、まずは上下の辺のでこぼこした辺を切り落としてきっちり20㎝幅にします。そうしてまずは上の辺に10㎝ごとに目盛の印(わずかな切り傷)を付けます。下の辺は上の辺に対して5㎝平行にずらして、10㎝ごとに目盛の印を入れます。そして上下の印から印にかけて、包丁で一直線にジグザグと裁断していきます。そうしてできた二等辺三角形を底辺から巻いていきます。これで成形は終わりです。 ※折り込み作業二日目(後半)の動画はこちらです。→https://youtu.be/soWFKbctbA4二次発酵は30℃設定で80~100分発酵を取ります。「もうこれ以上大きくならないな」というところまでしっかり発酵を取ります。発酵が終わったらオーブンから生地の入ったオーブン皿をとりだし、生地が乾かないように軽く被いをして、オーブンに「210℃の予熱」をかけます。予熱が完了したら生地の入ったオーブン皿をオーブンに入れ、「190℃の20分」で焼成します。以上になります。
こちらが断面になります。「パイ」と「デニッシュ・クロワッサン」との大きな違いの一つに「生地の層を破いちゃいけない」というのがあります。折り込み作業で生地を破らないように注意しましょう。イースト生地は気泡の発生(イーストの活動)が伴いますので、生地が破けてそこから気泡が逃げてしまうと、パン生地の目が詰まったり、目が詰まった結果火通りが悪くなり「生焼け」になってしまったりします。
こちらのクロワッサンはクロワッサンサンドとかにするより、朝食で軽く温めなおしてカフェオレetcと一緒にそのまま食べるのがおすすめです。わたくしもパンを冷凍して温めなおして食べています。
ではまた!。
※業務用レシピ
イースト起こし、クリーミングの下準備がありますので、材料を順番に表記しています。生イーストがあれば(これは別記事で別途説明)イースト起こしの手間はいらないのですが、鮮度の良い生イーストの確保は難しいのでインスタントドライイースト赤で「イースト起こし」をしています。折り込み生地はどうしても最短でも2日にかけて作業をしないと、綺麗な層ができません。逆に、合間が空くときは、1日目前半と、2日目後半の製造工程の間の期間を冷凍保存(1~3日程度)でしのぐことができます。その場合は1日目の作業で生地を冷凍しっぱなしで保管しておいて、前日の夕方に冷蔵庫に移して冷蔵解凍して、翌日に2日目の作業に移るといいと思います。実際に仕事が不定期なわたしも、「火曜日>金曜日」とかの2日で仕上げる場合がほとんどです。ポイントは、無理して延ばすと層が壊れてしまいますので、こまめに生地を休ませて、生地をしっかり弛緩させて、無理なく伸ばしていくことです。都度都度、生地が延ばしづらくなったら、冷凍庫で発酵を止める程度に冷やして、その後冷蔵庫で生地全体を冷蔵温度に冷やすようにして作業を進める「根気良さ」がいいクロワッサンを作る秘訣です。ただ、冷蔵期間が長いほどイーストは弱り、膨らみが悪くなるので「根気良さ」と同時に長い間インターバルを置かないような「勤勉さ」で粛々と作業進めていく事も同様に重要になります。人間性が出るパンかもしれませんね(笑)。
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