21記事目、スペシャリテ、Myシュトーレンの登場です。上は実際の写真。
クリスマス(日本では年末年始イベントの一環として)に特別なパンやお菓子が一品あると食卓が一層豊かになると思います。パンドーロ、クリスマスケーキ、パネトーネとかありますが、自分の「推し」はシュトーレンです。
日本のパン屋業界でいうと、年末はフランスパンの「ブール」「バタール」「バケット」くらいしか売れないんです、現実。日本は「食の豊かさと、その選択肢の豊富さ」は世界一だと思います。年越しソバに忘年会は居酒屋系食品、年始はおせち料理、お餅。もう食べきれないほど豊か。フランスパンが売れるのは年末年始の「リッチな食事」を提案する主婦様たちが「ビーフシチューのお供」や「コース風フランス料理」の「箸休め食材」としての需要があるのだと思います(ブールをくり抜いてそこにビーフシチューorホワイトシチュー。もしくは「パイ料理」。なんて、頑張ってくれている主婦様たちもいます)(そういった料理群の中で年末年始に食事の一環としてフランスパンを取り入れてくれる主婦層様、コース料理のサーブとしてフランスパンをプレートの脇に置いてくださる料理店様、パン屋業界では感謝の至極だと思います)。もう、読むだけでお腹いっぱいですよね?。さて年始、アルコールをはじめとした「オトソ」、「お雑煮」「なます大根」「おせちの重箱=錦卵や煮物や甘露煮などの保存環境に優れている食品群」etc。(重複しますが)お腹いっぱいです。ただ、年末年始の「食」に関して日本人が不足する傾向にある”要素”が一つだけあります。「洋風の味付けの料理やスィーツに飢える」のです。なので正月明けのパン屋は”意外に”売れます。日本の食の情勢事情はこのくらいにしておきます。
本題にはいります。年末はまあ「クリスマスケーキ」でしょう。+ローストチキンで洋食嗜好は完結。年始アルコール類、おせち料理。で、完結はしておりますが先ほどの不足要素「洋風の味付けの料理やスィーツに飢える」のです。洋風調理は「その手の方々」にお任せしましょう。スィーツ。パンドーロ、パネトーネはいまや日本では年通で食べらているので「スペシャリテ感がない」「日持ちするリッチなパンではありますが時間経過による風味アップはそれほどでもない」という個人的な感覚があります(パネトーネの”匠”の方がいたら、申し訳ございません)。その点、シュトーレンは時間の経過と共に、ミンスミートのラム酒の香り、スパイスのの香りがパン生地と一体化していき旨味を増していきます。しかも、パネトーネのような天然酵母の扱いの「面倒くささ」とかもありません。誰でも熟成の味を醸し出せます。おせち料理のしょうゆベースの煮物料理などに飽きたときに、シュトーレンを薄くカットして頬張ると「洋食スィーツへの飢え」を満たす事が出来ます。日持ちがしますので食べたい時に随時必要量をカットして長期的に保存食として機能します。そしてなにより、「旨いんです!」。ただし、糖質と脂質が半端なく多いのであくまでも「少量を”細く長く頂いていく”スィーツ」になります。素朴だけど熟成味と深い味わいが魅力のシュトーレン、ぜひお試しください。ちなみに、わたくしめ日本人なので「シュトーレンは毛布にくるまったイエス様をイメージするものなので、『波打つ山形にしなくては』」とか、そういう縛りからは一切開放されています。なんで味重視。アーモンドの風味を熟成味のある生地にいきわたらせたいので「マジパンを棒状にして包む」とかはしません。バターの油脂成分とシュガーの浸透圧を利用したパンの皮の保護膜成分の効率を最大化するため、きんつばのような真四角(無駄な表面積増加による保存性の低下や、無駄なドライフルーツの焦げ付きを防ぐため)を目指します。
レシピ:レーズンブレッド記事にある、おおきなパウンド型(長方形の1斤型とほぼ同じ容量)1つ分
インスタントドライイースト赤 4g
牛乳 64g
春よ恋 30g
きび糖 1g
グラスフェットバター 50g
きび糖 10g
カラントシュガー 10g
はちみつ 10g
オリゴ糖 10g
ローズソルト 2g
ローストアーモンドプードル 20g
カルダモン 2.4g
ナツメグ 3.6g
シナモン 2g
バニラオイル 4滴
全卵 40g
春よ恋 170g
ミンスミート(ラム漬けミックスフルーツ+クルミ入り) 260g
溶かしバター 80g
仕上げのきび糖 80g
1、ミンスミート(ラム漬けミックスドライフルーツ+クルミ入り)を仕込む。
この工程が面倒くさければ、市販のラム漬けミックスフルーツでも問題ありません。その場合、そのラム漬けフルーツ220gに対して、40gのローストしたクラッシュクルミを混ぜておきます。最低2~3日混ぜ込んでおくと、お互いの素材の風味が移り美味しいです。本格的なミンスミートを作りたい場合は、レーズンを主体にオレンジピール、レモンピール、ドレンチェリーなどをお好きな比率で集めて、全重量の1/5程のローストしたクラッシュクルミを投入。そのまた全量の1/3量のラム酒(ここにキルシュを混ぜても美味しいです)を注ぎ、1~3か月寝かします。牛脂(ラード)を細かく刻んで入れると更なる風味アップが望めます(個人的にはヘルシー面で牛脂は入れません)。しっかり寝かす期間が確保出来れば、自作するほうが美味しいです。
2、スターター(発酵生地の素)を作る
牛乳64gと小麦粉30gを混ぜ、湯煎にかけて40度前後にします。そこにインスタントドライイースト4g、きび糖1gを投入してホイッパーでよく擦り混ぜます。湯煎にかけっぱなしにして1時間発酵を取ります(高温下でイーストが死んではいけないので、冷めていく湯煎の中で問題ありません。40℃弱キープが最適理想ですが、高くしすぎなければ少し低い分には問題ありません)。30分経過で一回かき混ぜて、もう30分待ちます。
3、クリーミングと、粉合わせ
グラスフェットバターから全卵までの材料を順番に投入しながら、ホイッパーで混ぜていき、ホイップ状にクリーミングします。しっかりすり混ざったクリーミングが出来たら、そこに小麦粉170gを投入して、パイ生地を作る様にクリームとしっかりと擦り合わせていき、そぼろ状に仕上げます。
4、ミキシング>一次発酵
2と3をしっかりと混ぜ合わせます。しっかりと混ぜ合わせが出来れれば、グルテン膜の育成とかは気にしなくても問題ありません。その後30分発酵を取ります。
5、漬けフルーツ投入>ベンチレーター>成形>二次発酵
一次発酵後にフルーツを投入、ここでまたしっかりと生地とフルーツを混ぜ合わせます。ベンチレーターを30分取ります。その後、大きなパウンド型にバターを塗り、そのサイズに合わせて生地を海苔巻き状に成型、綴じ目を下にして型にセットします。オーブンレンジで二次発酵をとります。40℃の70分設定で発酵を取ります。
6、焼成>仕上げ
生地のボリュームが1.5倍位になっていると思います。発酵後パウンド型にアルミホイルでフタをします。オーブンレンジを190℃設定で予熱を始めます。予熱が完了したら、常温のオーブン皿にパウンド型を乗せて、オーブンに投入します。180℃で45~50分焼成します。焼き終わったら熱々のうちにバットに用意しておいた80gの溶かしバターにパンをドブ付けするように全体にバターをしみわたらせます。手でかけたり、パンをバットの中で転がしたり刷毛でフォローしてあげてもOK。バターを吸いきったら、また用意しておいたきび糖80gをバターのしみ込んだパンの表面に擦りこむように付着させていきます。全量のきび糖を擦り付け終わったら、網などの上で冷まします。しっかり冷ましたあとはラップにくるんで、常温で保管します。以上になります。
7、大体の賞味期限
常温で3週間ほど持ちます。作成後から2週間ほど時間をかけて熟成した旨味がピークに達します。2週間を過ぎたあたりから味が落ちていき、3週間を過ぎたあたりで保存環境が悪かったりするとカビが出る可能性があります。なんで、2週間を目安にするといいと思います。なのでそれを過ぎる場合は冷凍保管しておくといいと思います。例えば12月20日~翌1月5日の時期にシュトーレンを楽しみたい場合は、作成後冷めた後ラップをして冷凍、12月19日に常温解凍をはじめて12月20日から約2週間楽しむ感じです。
年末年始にぜひ楽しんで頂けたらと思います。では、また~。
※業務用レシピ
シュトーレンの材料の種類は多く、また工程も特殊なため、「全体像レシピ」と「分解レシピ」を作成しました。「全体像レシピ」からわかることは、「非常に水分の少ないブリオッシュ」「対粉100%以上の漬けフルーツが入る生地」であることです。漬けフルーツはフルーツから果糖が染み出し、ラム酒もアルコール成分が糖に変化しますのでとっても甘いものになります。そして仕上げに40%ものバターときび糖をまぶしつけます。ほぼ、パウンドケーキ並みの糖質の比率になります。なので、インスタントドライイーストはパン生地に入れるマックス量の2%で対応します。それでも、糖質の浸透圧にイーストの活性が阻害されるので、まずはシュトーレンの全材料から、イーストの活性を高める材料だけを抜き出して、スターターを仕込みます。そこで、イーストの活性を最大限に引き出します。残りの粉以外の材料はクリーミングでしっかり混ぜておき、そのうえで最後に粉を手で擦り合わせて「他の材料がよく混ざった状態」を作っておきます。そこに初めてイーストが十分に活性している「スターター」を混ぜることで、硬い生地に「しっかりと活性化させたイースト」「多すぎるほどの糖質」「多すぎるほどの脂質」を均一に混在させることができます。この段階ではまだ生地はボソボソですが、ここで初めて「本捏ねフロアータイム」をとって、さらにグルテンの育成を促します。何故、硬い生地にする必要があるかと言いますと、この後に「シロップにまみれた漬けフルーツ」を大量に投入するため、そのシロップを吸って柔らかくなることを前提に「硬い生地」を仕込むことになります。これらの作業によって、とてつもなく水分の少ない生地ができるので、それが「日持ち」をさせる一要素になります。生地は大量の糖質と脂質で十分に柔らかいので、ベンチなしで好きな重量に分割、成形をして、イーストが弱る前にホイロに移行してしまいます。そしてホイロ(二次発酵)で存分に膨らまして(とはいっても1/3程度のフルーツが入っているため普通のパン生地の半分ていど、1.5倍以上膨らめば合格ラインです)、じっくりしっかり低温で焼きこみます(水分が少ないので中心部まで熱が入りづらいのと、大量のイーストをしっかりと熱で死滅させるためです)(少ない水分を更に飛ばして「日持ち」をよくさせる意味合いもあると思います)。この複雑な説明を分解レシピ(1)(2)で書き出しました。焦げやすいので、低温で焼くことと、表面をアルミホイルで覆うか、蓋つきの型は蓋をしてしまうのがいいと思います。
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