わたくしがパンをつくっていたときの同業者でも意外に知らない人が多い食パン型の空焼き。
わたくし流になりますが、説明いたします。最初に手順を紹介します。
1、食パン型を180度~200度のオーブンで20分~30分そのまま空焼きする(フタも)。
2、チンチンの熱々の状態で、まずはボロ雑巾でよく内側の汚れをふき取る(フタも)。
3、ショートニングか、サラダ油か、天板スプレーを内側にまんべんなく塗る(フタも)。
4、180度~200度のオーブンでまた10分前後焼く(フタも)。
5、ボロ雑巾(よく使い古されて木綿カスが出ないのが望ましい)で、余分な油をふき取りつつ油がいきわたってない部分にもいきわたらせつつ、油を擦りこむように拭く。(フタも)(手の甲にハンドクリームを擦りこむような感じ)。
6、180度~200度のオーブンで更に10分前後焼く。
以上です。
理屈を説明します。基本はフライパンの空焼きと一緒です。まず、チンチンにしっかり熱することで、コーティング剤を焼きはがしたり、製造の過程でしみ込んでしまった鉱物油や、汚れを浮き立たせる役目があります。それと同時に、鉄を熱すると表面に酸化鉄(黒錆)の被膜ができて、これが、鉄の保護膜となり、熱伝導率を保護して使いやすくなります。アルスター、アルマイトは、ブリキ=鉄にアルミコーティングを施したもので、初めからアルミの酸化被膜が作られていますが、内部の鉄部分は空焼きをすることでより安定するのではないかと思います。
皆さんが勘違いしているかもしれないだろうことは、酸化被膜と、油脂被膜は別物で、各個別に被膜を生成及び、コーティングしてあげることです。汚れ落としの面では、鉄、アルタイト、アルスター共に空焼きすべきだと思います。最近はよくできていて汚れの付着も少ないので、空焼きする前に洗剤で水洗いを推奨しているところもありますが、わたくしは、その工程を省いて焼き後にまとめてふき取ることで問題ないと思います。鉄はチンチンに焼くことで、鉄の色がかわって、酸化鉄(酸化被膜)が生成され、アルミ類は初めから工場で、処理されています。たしかアルマイトは電解処理で酸化被膜を、アルスターは人工サファイヤや人工ルビーなどをつかって、酸化被膜を工場であらかじめ施してあるものだったような気がします。(この辺は専門外なので、より知りたい方は外部をググってください)
しかし、酸化被膜は板部の鉄やアルミの成分の保護が主目的になり、油を敷いた時のような滑るような食品の剥離効果はそれほど期待できません。それで、しっかりと熱して酸化被膜を形成させたり、始めから酸化被膜を施されていても熱することで浮かびあがらせた汚れをしっかりふき取ることで「酸化被膜が出来上がったまっさらな綺麗な状態」にすることができます。その状態にしてはじめてその上に油脂被膜をコーティングしていきます。油は180度~200度に一度熱することで、お水のようにサラサラになります。その状態でよく薄く塗り広げることで、スケートリンクのようなすべすべな表面ができます。それを、更に180度~200度で10分前後焼くことで(薄く塗り広げているので油が硬化を始めるにはこのくらいの時間で十分。)もし少し柔らかくても、冷めていく過程で硬化していくので問題ありません。ボロ雑巾から木綿カスが出ないことが重要なのはそのスケートリンクに木綿カスが入ってしまい、表面がでこぼこになってしまうからです。油が硬化を始める前に薄く塗り広げることが重要です。固まり始めてからだと、ぼこぼこになってしまいます。あと、分厚い油脂被膜は剥がれて食品に付着した際には体にもよくないですし、味もまずくなります。中華屋さんが普段は水洗いだけして、熱して乾かして、中華鍋の油脂被膜をキープしながら使いながらも、たまに洗剤でしっかり水洗いするのは、分厚くなった油脂被膜を洗い落として新たな油脂被膜を作り直しているからです。毎回洗剤で中華鍋を洗うお店は、毎回油脂被膜を作り直しているものと思われます。すこしお話が脱線しましたが、油はどんどん劣化していくので、長く使わないときは、よく洗剤で洗って、水分をよく落とし、鋼の包丁のように布や紙で、よく覆って、保管するといいと思います。あくまで油脂被膜は鉄部と食品の緩衝材の役目でしかないので、調理する前には、油脂被膜とは別に再度油を薄く引くことをお勧めします。そうすることで、油脂被膜の上にさらに硬化していない液状の油が塗布されるため、より、引っ付かなくなります。油脂被膜も、毎回塗る油脂もそれぞれ薄ければ、油っぽくなるとかは、全然ありませんので、その辺は気にしなくても大丈夫です。
長文になりましたが、いかがでしたでしょうか?理屈がわかると失敗も減ると思います。
皆様のより豊かな食生活ライフを祈念いたします。では、この辺で。
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